**改訂版**ハリケーン被害・自然災害とタックスリリーフ
本ブログはIRSがTax Proに提供した資料を基に2017年10月24日に書いたものですが、2017年9月29日に大統領がサインした”Disaster Tax Relief and Airport and Airway Extension Act of 2017”という法律の明細を追加しています。IRSからの正式な通知が出る前ですが、お困りの方への朗報ですので、改訂版としてUpしています。改定した部分は赤で書いています。
ハリケーンの被害に遭われた方には心からのお見舞いを申し上げるとともに、今後の生活やビジネス環境の早期回復をお祈りしております。
ヒューストン地域での洪水被害はノアの洪水と同じくらいの雨量という報道もあり、その被害は計り知れません。それ以上に、被害に遭われた方の中には、洪水保険に加入されていなかった人も多いのではないでしょうか。 現在、まだクリーンアップ、修理作業中、仮住まいの方、保険会社と交渉中の方もいらっしゃるでしょう。ハリケーンの被害はヒューストンだけではなく、フロリダ、ジョージア、プエルトリコにもおよび、更には、カリフォルニアの山火事でも大きな被害が出ており、心が痛みます。
大変な思いをされている方に、非力ではありますが、少しでもお役に立てれば、と思い、近日発令されたTax Reliefの内容について説明させていただきます。
これより説明する内容は、米国税制の、”Casualty Loss"(損害損失)の控除と呼ばれる項目です。一般の方にわかりやすくするため、大筋を記します。又、実践的に率直に「何をすべきか」「何ができるか」に焦点をあてて書いています。実際にファイルする場合には、更に詳しい調査が必要となります。本編では、Individual Taxに焦点を絞っています。
1。Tax reliefと特別災害区域について
1-1 ”私は該当するの”?:
Federally Declared Disaster Area(特別災害区域)にご自宅・ビジネスの資産がある方が該当します。
Federally Declared Disaster Areaとは、大統領が指定する特別被害区域のことです。特別被害区域にて個人資産の損害被害に遭われた方は、Tax Reliefの特例が受けられます。
特別災害区域外であっても、災害による被害に遭われた方へもTax Reliefの適用があります。違いは、特例の有無の差です。
以下のウエブサイトでは、ご自宅の住所をインプットすると、被害指定区域にあるかどうかがわかります。更に、政府補助への申し込みができる政府のサイトです。FEMAのサイトよりわかりやすくなっています。(すべて英語です。)
1-2 ”何が該当するの?” 個人所有の不動産(ご自宅)
動産(家具、車)
ビジネスの資産(ビル、社屋、在庫等)
賃貸の場合で、”災害時の修理の責任を負う”、という項目が賃貸契約に含まれている場合。
残念ながら、ペットは対象外になります。(大切なご家族のペットを亡くされた方、私も犬猫がいますので、心痛み入ります。)
2.Casualty Loss Deductionについて
Casualty Lossとは”突発的に”起こる損害損失のことです。ハリケーン、山火事、地震は”突発的”に起こる災害ですので、Casualty Loss Deduction
の対象となります。
災害の控除は、計算した結果の損失が収入の10%を超え、且つ、Standard Deductionを超える場合に、Itemized Deductionの項目の一つとして控除します。結果、リファンド増や、被害額が大きい場合は、他の年のタックスを改定ファイルして追加リファンドをもらえる場合があります。
しかし、特例は以下となります。
災害指定区域に該当する場合は、Itemized Deductionが出来ない方でも、Standard Deductionに被害額を上乗せして控除できます。
収入の10%以上という制限撤廃。
Deductionに上乗せできる控除額は保険金を上回る損失金額となります。保険金が損失額以上もらえた場合は利益と見なされるため、控除できません。
Floorという一定減額(保険のDeductibleと考えていいでしょう)が$100から$500へ増額。
2-1 Casualty Lossの算出方法の概略と事例
控除対象になる実質損害額の計算の仕方は以下です。
物件の市場価格については、3-2にて後述説明します。
①災害直前の物件の市場価値
-②災害後の物件の市場価値
=③被害総額
-④保険金
=⑤実質損害額 →清掃費・修理費は損害額には含めない
- $100 ->特例では$500
-⑥全収入の10% ->特例では免除
=⑦Casualty Loss →この数字が他の控除と合わせて、Itemized Deductionとして控除可能です。または、Standard Deductionに追加できます。
[例1] ご夫婦合算ファイル:全収入 $60,000 Flood Insurance無し
災害直前の持ち家の市場価格 $250,000
保険 ($ 0)
実質損害額 $ 190,000
IRS 規定一定減額(Floor) ($100) *特例 ($500)
IRS規定収入の10%(AGI) ($6,000)*特例 ($0)
Casualty Loss $183,900 $189,500
→2017年Standard Deduction $12,700 へ$189,500を 加算し控除可能。すでにStandard Deductionを超える控除がある場合には、Itemized Deductionとして追加する。 結果、リファンドが増える。(ご注意:すべての方他のタックスは違います。リファンドが無い場合もあります。)
但し、被害額を超える保険金が貰えた場合は、結果として”Gain"となるので、控除とはなりません。
[例2] ご夫婦合算ファイル:全収入 $60,000 Flood Insurance有り
災害直前の持ち家の市場価格 $250,000
-災害後の市場価格 ($60,000)
災害損失額 $190,000I
保険 ($220,000)
実質利益額 ($ 30,000)
→結果控除は無し。
2-2 必要な情報の入手方法
上記の例で災害後の物件の市場価値などどうやって調べるのだろうか、と疑問に思われていると思います。以下、情報の入手方法です。
①災害直前の物件の市場価値
□County Tax Assessor|Appraisal Districtのウエブサイト(住所、持ち主の名前で検索できます。)
□不動産業者・建築業者・モーゲージ会社・保険会社に問い合わせる
□カーディーラー、Kelly Blue book, Goodwill
②災害後の物件の市場価値
□保険業者の査定
□経験があり信頼できる査定専門業者を雇う。(有料)
□元の状態に戻すために、実際に発生した修理費.
*IRSは査定専門業者を利用することを推奨しています。
*家屋が全壊しても、土地と家の土台が残っていれば、災害後の物件の市場価格はゼロにはなりません。
3. Federally Declared Disaster Area 税制特例
3-1 特例:リファンドを今もらうこともできる
2017年に起きた災害のCasualty Lossの申請は基本的に2017年のTaxに含めますが、Federally Declared Disaster Area(特別災害区域)のCasualty Lossは特例として、2017年にファイルした2016年のタックスを訂正ファイル(Amendment)し、2016年のタックスから更に控除を増やして、リファンドを受け取ることができます。書類と条件が揃えば、2017年内に申請ができます。
更に、被害額が収入以上に大きい場合は、NOL(Net Operating Loss)という税制を使い、一年以上前の年や未来の年のタックスを訂正申請し、リファンドを受け取る方法もあります。
3-2 2016年とそれ以前のタックスの情報が災害で失われてしまった場合、以下の方法でタックス情報を入手することができます。
□IRS.gov のサイトより、Form 4506 をダウンロードし、必要項目を書き込む。
□災害の名目(例:Hurricane Harvey)を赤字で上部に書き込む。
□住所がFederally Declared Disaster Areaであれば、$50の手数料は免除となる。
3-3 特例:ファイリング延長
□9/15/2017と1/16/2018 期限のEstimated Income Tax -> 1/31/2018
□Estimated Tax Late Filing Penalty & Interest 免除
□2017 Disaster related tax filing due: 10/16/2018
→ 2017のTax と2016の訂正申請 Amendmentの両方に適用される。
4.補助と収入扱い
4-1 収入と見なされる補助
失業保険金 災害物件を交換するための補助
超過保険金
4-2 収入と見なされない補助
FEMAからの手当
5. トランプ政権下の税制変更
本文を書いている間も、税制は変わっておりまして、トランプ政権は、Standard Deduction の増額を提案しています。現時点では、議会では承認されていないので、年末近くになって可決・非可決が決まると思われます。
弊社では年末に税制変更をブログアップし本件フォローいたします。又、IRSより正式な特例の通知が発表された時点で追加情報をUpいたします。
Casualty Loss該当者の2016年のTax Rateが2017年より低い場合は、2016年のTaxを訂正申請したほうが有利な場合があります。
まずは、必要な情報を早急に集め準備、記録しておくことからはじめましょう。
6. 実際のTax Filing
以上、Casualty Lossについて、概要と特例事項を説明いたしました。あくまで概略です。上記以外にも特例はあります。実際のTax Filingは更に詳しいルールがあり、"Adjusted Basis" の計算などがあります。出来れば専門家に任せたほうが早く正確にファイリングができると思います。
自分でファイルされたい場合は以下をご参照ください。
7.お役立ち情報
IRS Taxpayer Assistance Center 1-844-545-5640
VITA (Volunteer Tax Service <$54000 Income)